特選『父』

まなざしフォト部三期フォトコンテスト「まなざし」受賞
コロナ禍で実家にも気軽に帰れなくなってどれくらいたっただろう。
まなざしで思い浮かんだのは父だった。
父は視野の狭くなる病気で目がほとんど見えない。今はピンホールほどの視野らしい。

私が小さい頃は写真やビデオを撮るのは父の役目で運動会やクラブ活動を残してくれていた。そんな父に対して感謝もせず遅れてやってきた反抗期を拗らせてた私は父と話をしない時期もあった。

結婚して娘や息子を出産し、ようやく本当に向き合えたような気がする。
良い娘じゃなかったし、1番ヤキモキさせた娘だっただろう。それでも寡黙で口下手な父はいつも見つめてくれていた。

この写真はいつかのお正月、実家へ帰ったときにどうしても両親の写真を撮りたくて、でもかしこまって言うのは恥ずかしくて、帰る直前それも車に乗り込む前に「ふたりの写真を撮りたいねん」と言って撮った写真。
「えーなんでお父さんたちなんか撮りたいんや〜どこ見るかわからへん」とぼやいていたけどカメラを構えると照れ臭そうにまっすぐカメラを、私を見てくれた。

見えなくなってしまう日も近いだろう。
いつもこうやって優しいまなざしで見つめてくれてありがとう。
お父さんが残してくれていたように私も子どもたちの姿をたくさん残してるよ。
おじいちゃんになったけど、私はいつまでもあなたの娘です。


写真・キャプション:hiraco



顧問コメント

お互いの照れくささが見え隠れし、きっと笑いながら撮られてたことも伝わり、そんな似た者同士の思いがたくさん詰まった素敵な一枚です。お父様がカメラに向けられたまなざしは、まぎれもなく撮影者であるhiracoさんに向けられたもの。このまなざしを撮ることができてよかったですね。心がぎゅっとなるような一枚をありがとうございました。

講評:相武えつ子さん(まなざしフォト部の顧問)


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