特選『俯瞰写真』

まなざしフォト部二期フォトコンテスト「光」受賞
私はこの写真が大好きです。なんてことない、ただ、幼稚園からの帰り、道草の最中に名前を呼んで、駆け寄って来てくれた長女のお顔をそのまんまカシャッと写しただけの1枚ですが、私にとってかけがえのない1枚なんです。

長女が生まれてから、私はカメラをはじめました。撮ること、残すこと、見返すこと、そのどれもが楽しく、夢中で日々撮り続けてきました。そんな中、つよく記憶に残る写真はどれかと訊ねられたなら、私は俯瞰写真を多くあげることでしょう(どれかひとつだけなんて選べないです)。

私はほぼ同じカメラ、レンズで家族を撮っています。レンズは単焦点1本だけ。このレンズはその名前の通り焦点距離を変えることができません(つまり伸び縮みしないということ)。そんなレンズで子どもの俯瞰写真を撮るとはどんなふうだと思いますか。赤ちゃんだった頃、娘はまだうつ伏せで、頭だけ一生懸命持ち上げて、私を見上げにこにこと笑ってくれました。私はそれを、少ししゃがみ込むようにして撮っていました。いつしかおすわりができるようになり、そして立つこともできるようになりました。するとお顔は前よりぐっとカメラに近くなりました。歩けるようになり、走れるようにもなり、今ではもうじっとしていてなんかくれません。とっても元気な、そして、いつの間にぐんと背の伸びた長女を今のカメラで捉えるのは至難の業です。それにもう、私が精一杯背伸びをしたとしても、画面いっぱい収まりきらないくらいに大きくなってしまいました!

このような俯瞰写真が撮れたとき、私は決まって「あと何回、この可愛いお顔を撮ることができるだろう」と思ってしまうのです。子どもたちの写真にはどれも愛おしさとせつなさを抱くのだけれど、俯瞰写真についてはそれをより一層つよく感じます。もっと、少しでも多く、長く、このような瞬間を撮ることができますように。そう願い今日も、明日もまた、カメラを持って子どもたちとでかけるのです。


写真・キャプション:柳田陽香



顧問コメント

この目。お母さんを見るこの目。お母さんにしか撮れない写真があるとするならそれを感じるような一枚です。 そして同じカメラ同じレンズで撮る理由。ハッとします。嫉妬します。 こんなお母さんにしか見せない顔をこれからも撮り続けてください。私も祈りに近いような気持ちでお写真を見させていただきました。

講評:相武えつ子さん(まなざしフォト部の顧問)


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